不完全な世界で共存していくため、ルールを適用し、変えていく
法学部長 本田 宏
近年、ルールや民主的な手続きに基づく世界が壊れかかっていると感じさせる出来事が増えています。国際法や国連の機関を無視する形で、大国やその軍事支援を受けた国による武力攻撃が行われ、膨大な数の犠牲者を出しています。民主主義を掲げる国においても、適正手続きに基づかない逮捕や言論の自由の制限が増えたり、ヘイトスピーチが野放しになっていたりします。さらにSNSの普及やIT技術の進歩に伴って偽情報が拡散しやすくなり、選挙結果にも影響を及ぼしています。選挙運動や国会での審議にも、十分な時間が確保されないことがあります。日常生活のレベルでも、例えば労働法のルールが守られていない職場はいくらでもあるでしょう。
そうはいっても、日常生活の大部分はルールに基づいて動いています。不完全な世界にあっても、ルールを適用し、あるいはルールを変えていく営みが、法と政治ということになります。
法律の条文は抽象的で複雑なため、法的に解決すべき争いが生じたときでも、どの法律のどの条文を適用すべきか、その条文の意味は何かなど、わかりにくいことが多いです。このため、具体的な事件に関する裁判所の判断と、それについての法律家や法学者による議論との積み重ねで、条文の意味や適用方法がある程度決まってきますが、それでも意見の違いは必ず残ります。こうした裁判例や学説を学びながら、具体的な争いの解決に役立てていくのが法学という学問です。その中で身に着けていく能力は「法的思考力」(リーガルマインド)と呼ばれ、事実関係を一つ一つ確認しながら、法の枠内での解決方法を客観的に考える能力といってもよいでしょう。
一方、法律があっても守られなかったり、不合理なルールがまかり通っていたりする場合、それを維持する力や構造が働いています。現状がいいという人々や現状から利益を受ける人々の存在、選挙制度や伝統のようなルールのあり方も絡んできます。ある観点からは不合理に見えるルールがあっても、それを変えることにより、別の問題が生じる危険性があるため、不用意にルールを変えない方がいい場合もあります。現状に不満があるときは、こういった様々な要素を客観的に分析しながら、プラスマイナスを考え、ある程度多くの人々や組織が合意できるような内容の提案をする必要があります。そういった分析や提案を行う能力が、政治学的な思考といえるでしょう。政治はまた団体や学校、地域社会など、国家より小さい単位でも存在するので、身の回りのルールを変えようとするとき、政治学の知識が応用できます。
法学部は法律学科と政治学科で構成されます。2年次学科選択制を採っているので、1年次は法律学と政治学の両方について基礎的な科目を学びます。2年次に学科に分かれた後はそれぞれ専門的な学びを深めていきます。法律専門職を目指す人のためには、法律学科では法曹養成プログラムと早期卒業制度を設けています。正規の科目以外にも、議員・NPOインターンシップ、グローバル・セミナー(ニセコでの英語オンリーのキャンプ、カナダ・レスブリッジ大留学)、法政大学への国内留学など、多様な学びの場を用意しています。
法や政治を考えることは、人々が共存していくことのできる社会を考えることでもあります。皆さんと学べることを、法学部スタッフ一同、心待ちにしています。
法学部沿革
| 1964(昭和39)年 | 北海学園大学法学部1部法律学科、2部法律学科を開設。 |
|---|---|
| 1986(昭和61)年 | 北海学園大学大学院法学研究科法律学専攻修士課程を開設。 |
| 1992(平成 4)年 | 北海学園大学大学院法学研究科法律学専攻博士(後期)課程を開設。 |
| 1999(平成11)年 | 北海学園大学法学部1部政治学科、2部政治学科を開設。 |
| 2003(平成15)年 | 北海学園大学大学院法学研究科政治学専攻修士課程を開設。 |
| 2005(平成17)年 | 北海学園大学大学院法学研究科政治学専攻博士(後期)課程、北海学園大学大学院法務研究科(法科大学院)法務専攻専門学位課程を開設。 |



